1996年32歳の頃。
レース形式の走行会に参加して3年目の9月。
レースがスタートしてまだ1分ほど。
ワタクシはコースの端にクルマを置き、ガードレールの外に居た。
側面が大きくヘコみ走行不能になった自分のハチロクを眺めながら。
第三戦のこの日は予選も好調で6番手。
朝から降っていた雨もやんで、タイヤチョイスが難しい路面の中山サーキット。
それまでの「全車ハチロク」ではなくタイム順の混走レースだった。
スタートしてすぐに目の前のシビック2台を抜き、1コーナーでハチロクも1台抜いた。
初の表彰台(3位以内)を目指して快調にグランドスタンド前コーナーを走り抜け…るハズだった。
しかし調子に乗ったワタクシはグランドスタンド前で単独スピン。
路面が濡れているのに早過ぎるアクセルオンが原因だった。
しかし10台で争うレースの1周目、すぐに最後尾からの追い上げをすればなんとかなる…ハズだった。
スピンしたままストップし、他のマシンが抜いていくのをやりすごしていると、最後尾スタートのシビックだけがワタクシのハチロクを避けずにこちらに向かって真っ直ぐつっこんで来た。
見えてなかったのかどうかはわからないが気付くのが遅く、フルブレーキでタイヤをロックさせたままぶつかった。
お互いロールバーとヘルメットに守られているので体は無傷だがクルマは無傷ではない。
シビックは少しバックして、ワタクシのハチロクを避け、走って行った…ラジエーターから煙を吐きながら。
こちらはと言うと、エンジンはかかっているのでとりあえずレース復帰しようと向きを変えたが、足回りから異音がするし動きも明らかにおかしい。
仕方なく、なるべく邪魔にならない場所までゆっくり移動し、停めたクルマから降りた。
ガードレールの外まで行き、初めて外から自分のマシンの状態を見る。
どう見ても「廃車確実」なぐらい修復が難しそうなハチロクを見て、怒りがこみ上げる。
いや、レース中に横向いて止まっていた自分が悪いのはわかっている。
しかし…怒りがおさまらない。
「熟練者ばかりのハチロクだけでレースをしていたら」
「シビックのドライバーがぶつかる寸前ブレーキを緩めてハンドル切ってくれてたら」
自分がスピンしたのを棚に上げ勝手に怒っていた。
ワタクシにぶつかったシビックは、当然エンジンが無事な訳もなく一周目終わりでピットに入ってリタイヤ。
ワタクシはそのまま、とてもとても長く感じたレースが終わるまでの時間、その場でレースを見ていた。
レースが終わり、サーキットスタッフがレッカー車でワタクシの「事故車」を回収にきてくれた。
「お手数かけます」とだけ言ってクルマを見送り、自分は徒歩でピットに戻る。
そのままシビックのドライバーの所へ行き
「コースを塞ぐような形で止まってしまいすみませんでした」と詫びた。
相手がどう言ったかさえ覚えていない。
運んでもらったハチロクをトラックに載せ、表彰式さえ見ずにすぐ帰った。
また雨が降っていた。
続く☆